自宅内に置いておく場合と、自宅外で誰かに保管してもらう場合があるでしょう。破棄や変造がされる可能性がありますので、できるだけ信頼のおける第三者に保管してもらうことを考えましょう。
遺言執行者を選任している場合にはその遺言執行者に保管してもらうことが考えられますが、死亡の事実をだれが伝えるのかがはっきりしていないと、遺言の存在を知らないままになってしまいます。
なお、貸金庫に遺言書を保管する方法がありますが、避けたほうが良いと思われます。亡くなった場合には、個々の金融機関の取扱いの違いはあるものの、法定相続人全員の同意がなければ開扉できない取扱いがほとんどです。
従いまして、まずは法定相続人全員を調査し、その後その全員からの同意をもらわないと貸金庫の開扉ができないので、迅速な遺言の執行が非常に難しくなるのです。
なお、法制審議会民法(相続関係)部会では、現在(平成30年1月16日)民法改正を検討しており、そこでは、法務局に自筆証書の遺言書を保管できるようにすることが検討されているようです。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900346.html
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Q&A遺言|自筆証書の遺言書を開封してしまったら?
封印されていた自筆証書の遺言書は、民法第1004条第3項により家庭裁判所の検認手続きにおいて開封しなければなりません。
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
検認手続きの中で、裁判所に開封した事実を申告しなければなりませんが、だからと言ってすぐに過料の処分がされるわけではありません。
効力に影響はないとは言うものの、開封によって、改ざんを疑われることがありますので、遺言書らしき体裁のものを発見した場合には、開封せずにただちに検認手続きを進めましょう。
Q&A遺言|自筆証書の遺言書は封筒に入れ密封しなければいけない?
自筆証書の遺言書は、全文を自書するなどの要件を満たせば、封筒に入れなくても有効なものです。従いまして、封筒に入れる場合でも、糊付けするなどして開けられないようにする(密封する)必要はありません。封印も必要ありません。
しかし、封印してある場合には、民法第1004条第3項により家庭裁判所において検認手続きの際に開封することになりますので、遺言書の存在を知らなかった他の相続人から改ざん等を疑われる心配はないものと思われます。
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
Q&A遺言|自筆証書遺言の作成方法は?
自筆証書遺言の作成方法は、法律(民法)で定められています。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
- 自筆で全部書く
- (自筆で)日付を書く
- (自筆で)署名する
- 印を押す
- 自筆で全部書く
自筆証書遺言は、遺言をしようとする人自身が自らの意思ですべて書いたもの(自書したもの)でなければなりません。
ワープロやタイプで打ったものは自筆とは言わないので無効です。
ただ、法制審議会民法(相続関係)部会では、現在(平成30年1月16日)民法改正を検討しており、そこでは、財産目録のみワープロで印字されたものでも有効と扱うように要件を緩和することが検討されているようです。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900346.html - (自筆で)日付を書く
自書する日付は、西暦、和暦どちらでも良いですが、○月吉日など特定できない日付は、日付の記載を欠くものとして、遺言自体が無効となります。 - 署名する
遺言をしようとする人自身の氏名を自書します。通称やペンネームなどでも良いですが、戸籍上の氏名を記載すれば疑義が生じることがないと思われます。 - 印を押す
押印します。印鑑は認印でもかまいませんが、唯一性のある実印を押印するのが良いと思います。押印がない場合も、遺言自体が無効となります。
間違えた場合には、その箇所に訂正印を押すことで訂正することができますが、訂正の仕方を間違えると、訂正がないものとされることがあります。また、後日の紛争を防止するためにも、一から書き直したほうが良いでしょう。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
Q&A遺言|公正証書遺言の作成方法は?
公正証書による遺言書は、原則として公証役場に遺言をしようとする人と証人2人が出向いて作成します。
遺言をしようとする人が何らかの理由により公証役場に出向くことができない場合には、ご自宅や入院先の病院などに、公証人に出向いてもらい作成することができます。
Q&A遺言|自筆証書遺言のメリット&デメリットとは?
自筆証書による遺言書のメリットは、次のとおりです。
- 自書する能力があれば、紙と筆記用具と印鑑さえあれば、いつでもどこでもすぐに作成できる。
- 誰にも知られることなく作成できる。
- 費用がかからない。
自筆証書による遺言書のデメリットは、次のとおりです。
- 要件をしっかりと把握して作成しないと無効になることがある。
- 遺言書の紛失、毀損、汚損、改ざんの可能性がある。
- 裁判所の検認手続きが必要なので、遺言者の死後において、相続人の費用負担や手間が増える。
- 文字が書けない場合には作成できない。
Q&A遺言|公正証書遺言のメリット&デメリットとは?
公正証書による遺言書のメリットは、次のとおりです。
- 公証人が関与するので形式の不備で無効になることは極端に少ない。
- 原本が公証役場に保存されるため、遺言書の紛失、毀損、汚損、改ざんの可能性がない。
- 裁判所の検認手続きが不要なので、遺言者の死後において、相続人の費用負担や手間が減る。
- 病気などで読み書きができない場合でも、遺言書の作成ができる。
公正証書による遺言書のデメリットは、次のとおりです。
- 公証役場へ提出する書類が必要である。
- 公証人の手数料がかかる。
- 証人に遺言内容が知られてしまう。